いく方の明るい性質の少女だったから、東助がそういいだすと、ヒトミもおもしろがって、早くあそこへいってあれをひろいましょうといって、足を向けた。
 二人は駆《か》けだした。だれかにひろわれては損をすると思ったからだ。しかしよく考えてみると、この広々としたやけあとは無人《むじん》の境《きょう》としてほってあるので、さっきから長い間、二人のほかに一人の人影もみなかったほどである。だからひろわれることもあるまいと思われた。
 二人の足は、しだいにおそくなった。それは、あのあやしい物体の落ちた近くまできたので、気味がわるくなったわけだ。二人はいつの間にか、としよりのように前かがみになり、全身を神経にして、用心ぶかく一足一足近づいていった。
 たしかに、ここだと思うところまできた。しかるに、あのあやしい物体は見つからないのであった。
「へんだねえ。たしかにここんところへ落ちたんだがね。ねえヒトミちゃん」
「そうよ。むこうから見ると、あの太い焼棒《やけぼう》くいと、こっちの鉄の扉との間だったから、どうしてもこのへんにちがいないと思うわ」
「でも、見つからないね、まさか消えてしまうはずもなし、どうした
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