いく」
 東助少年は見ているうちに、寒気《さむけ》がしてきた。それは色の黒っぽい丸みのある物体だった。それは何物か分らなかった。お尻のところからたしかに茶色がかった煙がでている。そしてそれは一直線には飛ばないで、ぶるんぶるんと三段跳びみたいな飛び方を空中でしていた。
「東助さん。あれが、『空飛ぶ円盤』じゃない?」
 ヒトミがさけんだ。
「そうかしらん。僕も今そう思ったんだけれど、『空飛ぶ円盤』ともすこしちがうようだね。だってあれは円盤じゃないものね。ラグビーのボールを、すこし角《かど》ばらせたようなかっこうをしているもの」
「西洋のお伽噺《とぎばなし》の本で、あんなかっこうの樽《たる》を見たことがあったわ」
 二人がそういっているうちに、その怪《あや》しい物体は気味《きみ》のわるい音をたてて近づいてきたが、そのうちに、急にすうーッと空から落ちてきた。二人が立っていたところから五十メートルばかりはなれた大きな邸宅《ていたく》のやけあとの、石や瓦《かわら》のかけらが山のようにつみかさなっているところへ、どすんと落ちた。
 たしかに落ちたことは、二人が目でも見たし、またそのあとで地震のような
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