ります。それによると低温のものから高温のものへ熱を移すことはできないのです。ですからこの法則を知らない人が、今いったような永久機関を考えて、やはり失敗するのです」
「すると、永久機関は、どんなものでも、全部だめなんですね」
「そうです。どうか、それを忘れないでいてください」
 そのときポーデル博士は、操縦席から立上って二人の方へきた。
「東助さん、ヒトミさん。いよいよ、お別れのときがきました。あなたがたの、ふしぎ国探検も、今日で終りになりましたよ」
「まあ。ほんとですか、先生」
「先生。だめですよ。もっとふしぎの国はたくさんあるのでしょう。いつまでも、ぼくたちをふしぎな国へ案内して下さい」
「いや、まあ、第一期はこのくらいでいいでしょう。そのうちに何年かたって、いいときがきたらまた案内してあげましょう。なかなかむずかしい国もありましたが、よく辛鞄して、わたくしについてきましたね。今までに探検したところは、みんななかなか大切なところなんですから、よく復習して、よく考えて下さい。今に、これまでの探検のおもしろさが、しみじみと分るようにおなりでしょう。では、さよなら」
「あっ、先生、待って下さい」
「ポーデル先生。いってはいやです」
 東助とヒトミは大声をあげたが、そのときにはすでに樽ロケットの室内の光景もポーデル博士もかきけすようになくなっていて、二人はおおいかぶさる緑の雑草の原の中にとりのこされていた。



底本:「海野十三全集 第12巻 超人間X号」三一書房
   1990(平成2)年8月15日第1版第1刷発行
初出:「ラジオ仲よしクラブ」
   1947(昭和22)年9月〜1948(昭和23)年7月号
入力:tatsuki
校正:原田頌子
図版:小林徹
2002年5月10日作成
2003年7月24日修正
青空文庫作成ファイル:
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