某所《ぼうしょ》を離れたのは、それから、約一ヶ月の後だった。
 もちろんロッセ氏も、共に博士の客であった。
 弩竜号は、おどろくべき精鋭《せいえい》なる武装船《ぶそうせん》であった。総トン数は、一万トンに近かったが、潜水も出来るし、浮かべばちょっとした貨物船に見えた。弩竜号に関しては、ぜひ報告したい驚異がいろいろあるが、本件の筋にはあまり関係がないから、ここには記さない。
 弩竜号は、大陸を離れて五日目には、灼熱《しゃくねつ》の印度洋《インドよう》に抜けていた。その日のうちに、セイロン島の南方二百|浬《カイリ》のところを通過し、翌六日には、早やアラビア海に入っていた。
「ソコトラ島とクリアムリア群島との、丁度《ちょうど》中間《ちゅうかん》のところへ浮き上るつもりです」
 と、金博士が、地図の上を指でおさえながらいった。
「博士、もっと、例の反重力弾《はんじゅうりょくだん》のことについて、話をしていただきましょう」
「ああ、あなた方を愕かしたあのものをいう、のろのろ砲弾のからくりのことかね。印度洋へ入ったら、いう約束だったから、それでは話をしようかね。からくりをぶちまければ、他愛《たあい
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