ら、前日までそこに並べておいたはずの第一号テレビジョン機がなくなって、そのあとが歯の抜けたようにポッカリあいていたから。
(先生はどっかへ持ってゆかれて、送影を始められているのだ。しかし時間を書いてゆかれないのは、先生らしくないことだ)
あくまで鈍感な私は、昨夜のできごとをこの黒板の字に結びあわすことをしないで、ただ先生の命令どおり受影機の前に坐って、スイッチをいれた。陰極管が光りだした。ダイヤルを握って七万kc[#「kc」は縦中横]のあたりを探してみると、はたして強い応答があった。それを精密に調整してゆくと、像の縞が流れだした。同期がだんだん合ってくると、スクリーンの上にひとつの映像が静止してくるのであった。そこに現われたのは一個の不思議な人間の姿だった。その顔には、防毒マスクのようなものをかぶり、マスク中央からは象の鼻のような三本のゴム管が垂れさがり、その先は高圧タンクの口につながっていた。その背後には、たくさんの丸いメーターがベタベタ並んでいて、黒い目盛盤の上に白い指針がピクピク動いていた。不思議の部屋! 奇怪なる人間!
「宇留木君。いま時間はどうだネ」
受影機のラッパから響
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