だしようもなかった。ロケットが飛びだした原因はまったく不明であったが、あるいは、ガスの自然爆発によるものではないかともいわれた。渋谷先生でもこられたならば、なにか適切な善後手段を訊くことができるであろうと思ったが、先生はその夜ついに姿を現わさなかった。
 私が先生の姿を発見したのは、じつにその翌朝のことだった。
 なんにもまだ気のつかない私はいつものように、八時半ごろ研究室の鍵をあけた。すぐコートを脱いで白い実験衣に着かえながら、私は壁にかかっている小さい黒板の上の字を読んだ。それはいつも渋谷先生が翌日の仕事を、早く出てくる私に命令されるために書きつけてゆかれるのが例になっていたものである。

[#ここから2字下げ]
出勤次第、第二号「テレビジョン」機ヲ「スタート」ノコト。受影機ノ同調周波数ヲ七万付近ニ選ビ、調整ノコト。陰極管ノ水冷ニ特ニ注意ヲ要ス。
[#ここで字下げ終わり]

 この命令は私にちょっと不審を起させた。相手もないのに、受影をしてみるというのは意味のないことではないか。博士の心を推しはかりかねた私は、機械のところに来てみて、はじめてそれが意味のあることだとわかった。なぜな
前へ 次へ
全12ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング