であろう。
『ヒルミ夫人の冷蔵鞄』は「科学ペン」に発表したもの。作者としては、わりあいに好きなテーマであるが、ただ紙数の制限から、書き足らぬのが残念である。こういうものをがっちりと書けば、科学小説の面白さが誰にもわかってくれると思う。
『生きている腸《はらわた》は「週刊朝日」に発表したものである。これは一見はなはだ荒唐無稽《こうとうむけい》であるけれど、これでなかなか示唆に富んだ未来小説だと作者自身はひとりでおそろしがっている次第である。
『宇宙囚第一号』は「科学主義工業」に発表したもの。これに関して、某紙上に共鳴者が現れたことは、作者のよろこびとするところであった。
『見えざる敵』と『軍用鮫』と『時間器械』との三つは、「新青年」に発表したもので、ナンセンス的科学小説である。
こういうものを書いているときは、作者も至極《しごく》たのしい。
『月世界探険記』は「少年倶楽部」で落第し、その後何とかいう雑誌から原稿をねだられて出したもの。向こうでも心得たものか、いまだに原稿料を払わない。二三度人を介して談判したが、埒《らち》があかない。そのうちに面倒くさくなって、そのままになっている。こう
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