こんだ。
 それから二、三十分も経ったと思われるころ、三ちゃんは水洗平皿《すいせんひらざら》に、黒く現像のできたフィルムを浮かして現れた。
「おい三ちゃん、どうだったい」
「うん。なんだかしらないけれど、とにかく妙なものがぼんやり出ているようだぜ。いまそれを見せてやるから、待っていなよ」そういって三ちゃんは、水に浮いているフィルムを、そっと水中でひっぱってみせた。
「ほら、ここんところを見てごらん。なんだか白い環《わ》のようなものが、ぼんやりと見えるだろう。これはたしかに○○獣らしいぜ」
 フィルムのままでは、白と黒とがあべこべになっているので写真を見つけない敬二にはよく見えなかった。そこで三ちゃんは、水洗をいい加減にして急に乾かすと、それを印画紙《いんがし》にやきつけた。すると肉眼で見ていると同じ光景が、写真の面にあらわれた。
「ああっ、これだ。この輪が○○獣なのだ」
 それは崩壊してゆくガレージの壁をとった写真だったが、その壊れゆく壁土《かべつち》のそばになんとも奇妙な二つの輪がうつっていた。かなり太い環であった。それは丁度噛みあった指環のような恰好《かっこう》をしていた。どうして
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