は、それから間もなくのことだった。
 ――赤い眼をもった二つの大怪球と、東京ビルの崩壊とは、別々の異変なのであろうか。それともこの二つは同じ異変から出ているのであろうか。
 翌日の朝刊新聞には、東京ビルの崩壊事件が三段ぬきの大記事となって、デカデカに書きたてられていた。
「深夜の怪奇! 東京ビルの崩壊! 解けないその原因!」という標題《ひょうだい》があるかと思うと、他の新聞にはまた、「科学的怪談! 蟹寺博士もついに匙《さじ》を投げる。人類科学力の敗北!」
 などと、大々的な文字がならべてあった。
 敬二少年は、東京ビルの崩れた前でその新聞を一つのこらず読みあさった。しかしその新聞記事のどこにも、例の二つの大怪球のことは出ていなかった。敬二少年は不思議でならなかった。なぜあのことを書かないのだろうか。
「オイ給仕、この騒ぎのなかで、新聞なんか読んでいちゃいけないじゃないか。そんな遑《ひま》があったら、壊れた壁を一つでも取りのけるがいい」
 喧《やかま》し屋の支配人|足立《あだち》は、敬二少年を見つけて、名物の雷を一発おとした。
「ははッ――」と、敬二は鼠《ねずみ》のように逃げだしてビルの
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