もらいたいものだと思うことがある。つまり、何処の国の人間にもなりたくないのだ。自分以外になん等のオーソリティなしに暮らしたいのだ。色々な責任から脱却したいのだ――随分、虫の好い考えかも知れない。まずそれが出来るのは乞食か浮浪人になるより仕方がないらしい。だが、聴くところによると、乞食にも色々な集団があって、繩張を争うようなことがあるそうだ。こうなると、無人島へでも一人で移住するより仕方がなくなるかも知れない。そして無人島で「無為無作」を続けることになると、その当然の結果として、餓死してしまうだろう。
だから、自分の生活は俗にいう不徹底極まりない生活である。しかし、考えると所謂徹底ということにどれ程の価値があるかそれさえ自分にはわからない程、自分はグラグラしているのだ。まことにフヤケたダラシのない生き方である。意気地なしの骨頂である。僕のような代物が若し今の労農露西亜に生まれていたとするなら、とうに打ち殺されているにちがいない。それを思うと現代のありがた味をつくずくと眼の醒めたように感じさせられるのである。そして、少しばかり自分の想っていることのいえない位は我慢しなければならないという
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