い給え!
 自分の自我は今、その妄想で恐ろしく燃焼している。自分の自我はその妄想を食って生きている。僕はこの妄想に不断の燃料を加えて、愈々益々それを白熱化し絶えず溶岩を虚空に向かって奔出させる物凄いヴォルカノの姿にしてみたいと思っている。
 書いている間に「浮浪人の法悦」などはいつの間にか姿を失って、どうやら「色狂人の法悦」になってしまったようである。そして指定の枚数も尽きたようである。筆による自己表現の慾望が近頃萌しかけていることはまず自分としてはいい傾向だと思う。自分はまた更に題でも改めて色々な問題に向かって、自分独自な考えを発表したいと思っている。この漫語は一まずこれで切りあげよう。 (一九二一年五月二十九日)


底本:「辻潤著作集3 浮浪漫語」オリオン出版社
   1970(昭和45)年3月30日初版発行
※表現のおかしい箇所は、「辻潤選集 玉川新明編」五月書房、1981(昭和56)年10月11日初版を参照して訂正した。
入力:et.vi.of nothing
校正:et.vi.of nothing
1999年1月24日公開
1999年9月6日修正
青空文庫作成ファイル:
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