惰眠洞妄語
辻潤
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)堯舜《ぎょうしゅん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「木+無」、第3水準1−86−12]
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今のような世の中に生きているというだけで――それだけ考えてみたばかりでも私達は既に値打づけられてしまっているように感じることがある。
昔、堯舜《ぎょうしゅん》の時代というようなそんなものがあったか、なかったか、又この先きユウトピヤとか、ミロクの[#「ミロクの」は底本では「ミクロの」]世の中とかいうものが来るか来ないか、そんなことを何遍繰返して考えてみたところで、私は少くとも今日一日の生命を生きてゆかなければならないことだけは事実だ。現実肯定だ。それ以外に名案は浮んでは来ない。
私にとっては現実を肯定するということは厚顔無恥に生きるということの別名に過ぎない。――厚顔無恥も度々繰返している間には無邪気に思われるようにさえなって来る。
私は自分が厚顔無恥であるということ
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