い――。
2
おもちゃは腹の足しにはならない。そんなものはゼイタク品だ。一切のおもちゃを破壊せよ!――腹の空いた人間の理窟としては無理もない。だが私のような発育未熟の永遠の赤ん坊は少し位腹が減っていても自分の好きなおもちゃがあるとそれでかなりまぎれている。
おもちゃを持って遊ぶことの出来ない人間は不幸なものだ。
おもちゃの好きなものは当然おもちゃに対する鑑賞眼が肥えて来る。金さえ出せばいいおもちゃが買えるというわけのものではない。いくら金があってもおもちゃのよしあしのわからない人間もいる。――莫大な金を出してつまらぬおもちゃを買う者もいる。自分で好みもせぬのに、人に見せびらかすためにやたらと買う者もいる。
おもちゃのほんとうに好きな人間は自分で自分のおもちゃを撰択する。時代と流行と人気とは彼になんの関りもないのである。
私は自分が拵えて、自分が楽しむことの出来ないような玩具はなるべく拵らえたくないと思っている。
いつまでいじくっていても少しも見倦《みあ》きのしないようなものを拵えたいと思っている。
人のこしらえた物が気に喰わなければ自分で気に喰う物を
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