錯覚自我説
辻潤

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)雌伏《しふく》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)かれは大|劫初《ごうしょ》から

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)必要[#「必要」は底本では「心要」]
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        1

 現代においてはすべて形而上的な一切の思想は季節外れである。芸術(特に文学)においても幻想的な、主観的な、浪漫的なものはすでに過去の遺物ででもあるかの如く蔑視されている。
 時代の潮流と共に歩調し得ないあらゆる思想や芸術はほろび去るがいい!
 来るべき天国への鍵は新興プロレタリアートのみで把握しているのだ。自余のブルジョア的、小ブルジョア的、インテリゲンチャ的の一切は来るべき天国への資格を欠いている。かれ等はやがて小気味よくもほろびんとしている人種どもである。たとえかれ等が如何にもがきあがこうとも最早生命の道を無残にも断絶されている過去的亡者どもである。
 現実的、科学的、生産的なもののみが未来の栄光に与かり、溌剌たる健康な新世界に生きる資格を有しているのである。
 私は果して然
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