もそれに似通った深い感じをさせられながら夜警というものに出たりなどした。
友達のこともかなり心配になったが、K女のお腹のふくれ[#「ふくれ」に傍点]ていることはさらに厄介な種であった。僕は彼女に時々フクレタリヤと呼んでいた。フクレタリヤに野天生活をさせることは衛生にとってあまり好ましいことではないが、入るべき家がなければ致仕方がない。
彼女を一時彼女の里へ預けることにきめ、老母と子供とをK町からあまり遠くないB町の妹のところへ預けて僕らは出発したのであった。
途中の話は略すが、名古屋で彼女を汽車へ乗せて僕は一人だけ残り、それから二、三日して大阪へ下車し、そこで取りあえず金策にとりかかって一週間程くらした。
夕方道頓堀を歩いている時に、僕は初めてアノ[#「アノ」に傍点]号外を見た。地震とは全然異なった強いショックが僕の脳裡をかすめて走った。それから僕は何気ない顔つきをして俗謡のある一節を口ずさみながら朦朧とした意識に包まれて夕闇の中を歩き続けていた[#「歩き続けていた」は底本では「歩き読けていた」]。
妹の家に預けてあるまこと[#「まこと」に傍点]君のことを考えて僕は途方にくれ
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