ふもれすく
辻潤

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)早い晩《おそ》いを論じて

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ダダ[#「ダダ」に傍点]にとっては
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 題だけは例によってはなはだ気が利き過ぎているが、内容が果たしてそれに伴うかどうかはみなまで書いてしまわない限り見当はつきかねる。
 だが、この題を見てスグさまドヴォルシャックを連想してくれるような読者ならまず頼もしい。でなければクワイトえんでふわらん。
 僕は至ってみすぼらしくもおかし気な一匹の驢馬を伴侶に、出鱈目な人生の行路を独りとぼとぼと極めて無目的に歩いている人間。
 鈍感で道草を食うことの好きな僕の馬は、時々嬉しくも悲しい不思議な声を出しては啼くが、僕が饒舌ることも、その調子と声色において僕の伴侶のそれとさして大差はあるまい。
 真面目ともっともらしさとエラそうなこと、さてはまた華々しいこと――すべてそういう向きのことの好きな人間は初めから僕の書くものなどは読まない方が得だろう。
 人間はさまざまな不幸や悲惨事に出遇うと気が変になったり、自殺をしたり、暴飲家になった
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