着物の洗濯でも出來た時には私の方から持つて行きました。日本橋の本町です。風呂敷包を携《かゝ》へながら紙問屋の店頭《みせさき》まで行きますと、そこに居る番頭が直ぐ私を見つけまして、小僧にそれと知らせたものです。銀さんは前垂の塵埃《ほこり》を拂ひながら、奧の藏の方から出て來て、庭で荷造りする人達の間などを通りましてそれから私の方へ來ました。私の口から言つては可笑しいやうですが、銀さんも大きく成りました。それに髮などを短くしまして、すつかり御店風《おたなふう》に成りました。私達二人は店の横手の日のあたつた土藏のところに倚凭《よりかゝ》りながら、少年らしい簡單な言葉を交換《とりかは》すのみでした。
私は勤奉公する銀さんから自分の自由な身を羨み見られるのがツライと思つたことも有り、時にはいそがしさうな店頭の樣子を眺めて、碌に話もせずに別れて來ることが有りました。左樣いふ時には、私達は唯ニツコリ顏を見合せるに過ぎませんでした。銀さんも亦默つて私の手から洗濯着物を受取つて、御店の方へ引込んで行つて了ひました……
ある日、豐田さんの家では田舍から女の客を迎へました。お霜婆がめづらしく訪ねて來たので
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