斯の婦人に養はれましたが、二番目の兄が國から上京して斯のさまを見た時は、私のために心配し始めた位でした。鷲津の姉さんの早く、早くで、終《しまひ》には私は青く成つて了ひました。

        七

 私は極く早い頃から臆病な性質をあらはしました。銀さんは國に居る頃から私と違ひまして、木登りの惡戲《いたづら》から脚に大きな刺《とげ》などが差さつても親達に見つかる迄はそれを隱して居るといふ方でしたが、私は他《ひと》の身體の疼痛《いたみ》を想像するにも堪へませんでした。東京へ修業に出て來てからも、二番目の兄に連れられて寄席などへ遊びに行きますと、中入前あたりには妙に私は心細く成つて來るのが癖でした。斯の兄は其頃から度々上京しまして旅屋《やどや》に日を送りましたから、私もよく銀座邊の寄席へは連れられて行きましたが、騷がしい樂屋の鳴物だの役者の假白《こわいろ》だのを聞いて居ると、何時でも私は堪へ難いほどの不安な念に襲はれました。その度に、私は兄一人を殘して置いて、寄席から逃げて歸り/\しました。それほど私は臆病でした。
 一方から言へば私は八歳の昔に早や初戀を感じたほどの少年で(そのことは既に
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