を感じました。のみならず、私は周圍の冷淡な人達に對して自分の少年らしい感情を隱すやうに成りました。たま/\學校から歸つて來て見ると、老爺さんは鏡に向つて眉間《みけん》の瘤《こぶ》を氣にして居ます。なんでも其瘤は非常に大きなニキビの塊だといふことでした。どうして、年は取つてもなか/\の洒落ものでしたから、到頭老爺さんは剃刀を取出して、自分でそのニキビの塊を切りました。そんなことを見る度に、私は斯の年甲斐のない老人に對してさげすみの念を抱きました。
斯ういふ家庭の空氣でしたから、自然と私の心は屋外《そと》の方へ向ひました。私も早や東京へ出たての時のやうに髮などを長く垂れ下げて、黄八丈の羽織をヨソイキに着るやうな少年ではありませんでした。毎朝數寄屋河岸へ通ふ途中で一緒に成る男や女の學校友達の顏は、私には親しいものと成つて來ました。その頃普通教育は男も女も合併の時分で、私は一方に炭屋の子息《むすこ》さんと席を並べ、一方には時計屋の娘やある官吏の娘などと並んで腰掛けました。斯の官吏の娘の家は私達が住むと同じ町の並びにありました。姉妹《きやうだい》で學校へ通つて居ました。何がなしに私はその家の前
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