いしころ》の多い山道にさし掛りました。私は風呂敷包を襷にして背中に負《しよ》ひ、洋傘《かうもり》を杖につき、喘《あへ》ぎ喘ぎその坂を攀ぢ登りましたが、次第に歩き疲れて、お文さんの兄さんや銀さんから見ると餘程後れるやうに成りました。日は暮れかけて、山の中は薄暗く見えるやうに成つて來ました。
『金米糖を呉れなけりや、歩けない。』
『呉れるから、歩け。』
 私は兄と斯樣な押問答をして、路傍《みちばた》の石に腰掛けては休み/\、復た出掛けました。そのうちに金米糖どころでは無くなつて來ました。私には歩けなく成りました。何となくお腹まで痛く成つて來ました。私は洋傘をそこへ投出して動かずに居たこともあります。すると兄が私の傍へ來て、私の帶へ手拭を結はへ附けまして、それで私を引き立てました。
 斯の骨の折れる山道を越して、漸《やつと》のことで峠の下まで歩いて行きますと、澤深い温泉宿のやうな家々の灯が私の眼に嬉しく映りました。そこが中仙道の沓掛《くつかけ》であつたかと覺えて居ます。
 何處から馬車に乘つたかといふことも、ハツキリとは記憶しません。唯、前の方へ突進する馬車と……時々|馬丁《べつたう》の吹き
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