御地の青い林檎は斯のあたりの店頭《みせさき》にあるものと異なり樹から※[#「てへん+宛」、第3水準1−84−80]《も》ぎ取つたばかりのやうな新鮮を味ひました。御蔭で子供も次第に成人して參ります。函館の老爺《ぢゝ》上京の節も、孫達の顏を眺めて、稀《たま》に出て來て見ると大した違ひだと申した位です。私がたはむれに弟の方の子供を抱き上げて見て、更に兄の方を抱き上げながら大分重くなつたと申しましたら、兄の子供はさも嬉しさうに首をすくめて笑ひました。
『重くなつたと言はれるのが、そんなに嬉しいの?』
と側に居る娘も笑ひながら言ひました。
毎日長い黐竿《もちざを》を持つて町の空へ來る蜻※[#「虫+廷」、391−8]《とんぼ》を追ひ※[#「えんにょう+囘」、第4水準2−12−11]して居た兄の子供も、復た/\夏休み前と同じやうに鞄を肩に掛けて、學校へ通ふやうに成りました。近所の毛筆屋《ふでや》の子で眼のパツチリとした同級生が毎朝誘ひ合せては出掛けますが、ある夕方、その子が遊びに來て門口から私の家を覗きました。瓦斯《ガス》とか電燈とかで明るい屋並の中に、吾家《うち》ではまだ洋燈《ランプ》を用ひて
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