々には山車《だし》、踊屋臺などが造られ、手古舞《てこまひ》まで出るといふ噂のあつた程で、鼻の先の金色に光る獅子の後へは同じ模樣の衣裳を着けた人達が幾十人となく隨いて、手に/\扇を動かし乍ら、初夏の日のあたつた中を揃つて通りました。それ獅子が來た、御輿が來たと言つて、子供等は提灯の下つた家の門を出たり入つたりしました。
『御祭で、どんなに嬉しいのか知れません――』
 と姉さん達は斯の子供等のことを言ひましたが、兄の方は肩に掛けた襷の鈴を鳴らして歸つて來て、後鉢卷などにして貰ひ、黄色い團扇《うちは》を額のところに差して、復た町の方へ飛び出して行くといふ風でした。提灯に蝋燭の火が映る頃から、二人とも足袋跣足《たびはだし》にまで成つて、萬燈《まんどう》を振つて騷ぎ※[#「えんにょう+囘」、第4水準2−12−11]りました。
 私も祭らしい日を送りました。町に響く太鼓、舁《かつ》がれて通る俵天王《たるてんわう》、屋臺の上の馬鹿囃《ばかばやし》、野蠻な感じのする舞――すべて、子供の世界の方へ私の心を連れて行くやうな物ばかりでした……
 毎年のやうに私は出して着る袷が二枚あります。母の手織にしたもの
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