ているような、そして又考え深い眼であった。
 明治年代に記憶すべき、大きな出来事の一つは、士族の階級の滅亡である。その階級が有《も》てる凡《すべ》てのものの滅びて行ったことである。その士族の子孫の中から北村君のような物を考える人が生れて来たということは私には偶然では無いように思われる。猶《なお》、新時代の先駆者たりし北村君に就いては、話したいと思うことは多くあるが、ここにはその短い生涯の一瞥《いちべつ》にとどめておく。
[#地から1字上げ](大正二年四月)



底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房
   1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行
   1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行
初出:「文章世界」
   1912(大正1)年10月
※初出情報は「藤村全集第6巻」(筑摩書房)に拠った。
入力:kamille
校正:鈴木厚司
2004年10月31日作成
青空文庫作成ファイル:
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