って来るそうな。おれは楠正成《くすのきまさしげ》の故知を学んでいるんだ。屎合戦《くそがっせん》だ。」
旧組頭なぞの制することも半蔵の耳に入らばこそだ。これまで幽閉の苦しみを忍びに忍んで来た彼は手をすり足をすりして泣いても足りなかったというふうで、なおも残りの屎を投げてよこそうとする。木小屋の土間にいてあちこちと避け惑うものの中には、どうかするとそこへすべってころびそうになった。ぷんとした臭気は激しく庄助らの鼻をついた。
「これはたまらん。」
と言い出した清助をはじめ、庄助も、勝之助も、その土間の片すみに壁によせて置いてある蓆《むしろ》の類を見つけ、あり合うものを引きかぶって逃げた。
六
万事終わった。半蔵がわびしい木小屋に病み倒れて行ったのはそれから数日の後であったが、月の末にはついに再びたてなかった。旧本陣の母屋《もや》を借りうけている医師小島拙斎も名古屋の出張先から帰って来ていて、最後まで半蔵の病床に付き添い、脚気衝心《かっけしょうしん》の診断を下した。夜のひき明けに半蔵が息を引き取る前、一度大きく目を見開いたが、その時はもはや物を見る力もなかった。もとより
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