》くあの古い寺が長い間の村の中心の一つであったことを容易に想像することはできた。あだかも、遠い中世の昔はまだそんなところにも残って、朝晩の鐘に響きを伝えているかのように。
 馬籠峠の上は幾層かの丘より成る順登りの地勢で、美濃よりする勝重には一つの坂を越したかと思うと、また一つの坂を登らねばならないようなところだ。浅い谷がある。土橋がある。谷川も走り流れて来ている。その水を渡って、岩石の多い耕地が道の左右に見られるところへ出ると、彼は新茶屋での景蔵の話を思い出して深いため息をついた。さらに石を敷きつめた坂を登って馬籠の町はずれへ出ると、彼はこれから見舞おうとする旧い師匠が前途のことを想《おも》い見て、これにもまた深いため息をついた。


 その日、勝重はかねて懇意にする伏見屋に一晩泊めてもらうつもりであったから、旧本陣をあと回しにして、まず二代目伊之助の家族を訪《たず》ねた。そこには先代の遺志をついでなにくれとなくお民らの力になる二代目夫婦があり、これまで半蔵の教えを受けて来た三郎やお末のような師匠思いの兄妹《きょうだい》があり、今となって見れば先代伊之助を先立ててよかったと言って、もし
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