ば、それでもよい酒のさかなになった。同じ大根おろしでも甘酢《あまず》にして、すり柚《ゆず》の入れ加減まで、和尚の注意も行き届いたものであった。塩ゆでの枝豆、串刺《くしざ》しにした里芋の味噌焼《みそや》きなぞは半蔵が膳の上にもついた。庄助は半蔵の隣の席にいて、
「へえ、お師匠さまは酒はおやめになったように聞いていましたが、またおはじめになりましたかい。」
 これには半蔵もちょっと挨拶《あいさつ》に困った。正直者で聞こえた庄助は、飲めばすこししつこくなる方で、半蔵が様子を黙って見てはいなかった。
 一同の待ち受ける秋の夜の光が寺の庭に満ちて来たころ、半蔵はまだ盃を重ねていた。いったん、やめて見た酒も、口あたりのよいやつを鼻の先へ持って来ると、まんざらでもない。それに和尚の款待《もてなし》ぶりもうれしくて、思わず彼はいい心持ちになるほど酔った。でも、彼のはそう顔へは発しなかった。やがて彼は人々と共に席を離れて縁側へ出て見たが、もはやすこし肌寒《はださむ》いくらいの冷えびえとした空気がかえって彼に快感を覚えさせた。そこここの柱のそばには、あるいはうずくまり、あるいは立ちして、水のように澄み渡っ
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