四月にもおれのところへさげて来てくれたッけが。」
「なんでも、あの人はあなたの禁酒したことを知らなかったんですとさ。どうも失礼した、お師匠さまには内証にしてくれなんて、そう言って、これは煮ものにでも使うようにッて置いて行きましたよ。」
 こんな言葉をかわした後、間もなくお民はしたくのできた膳《ぜん》を台所から運んで来た。憔悴《しょうすい》した夫のためにつけた一本の銚子《ちょうし》をその膳の上に置いた。
「こりゃ、めずらしい。お民はほんとうにおれに飲ましてくれるのかい。」
 半蔵はまるでうそのように好きな物にありついて、盃にあふれるその香気《かおり》をかいだ。そして元気づいた。お民はその夫の顔をながめながら、
「そう言えば、こないだというこないだは、わたしもびッくりしましたよ。」
「うん、あの話か。あんなことは、めったにないやね。なにしろ、お前、変なやつが来てこの庭のすみに隠れているんだろう。あいつは恐ろしいやつさ。このおれをねらっているようなやつさ。おれもたまらんから、古い杉ッ葉に火をつけて、投《ほう》りつけてくれた。もうあんなものはいないから安心するがいい。」
「ほんとに、あなたも気
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