諸外国公使の同意を得ようとした当局者の焦躁《しょうそう》から、欧風に模した舞踏会を開き、男女交際法の東西大差ないのを粧《よそお》おうとすることも起こって来た。仮装も国家のため、舞踏も国家のため、夜会も国家のため、その他あらゆる文明開化の模倣もまた国家のためであると言われた。交易による世界一統が彼の勇猛な目的を決定するものであるとすれば、我もまた勢いそれを迎えざるを得ない。かつては金銭を卑しみ、今は金銭を崇拝する、それは同じことであった。この気運に促されて、多くの気の鋭いものは駆け足してもヨーロッパに追いつかねばならなかった。あわれな世ではある、と半蔵は考えた。過ぐる十五、六年の間この国ははたして何を生むことができたろう。遠い昔に漢土の文物を受けいれはじめたころには、人はこれほど無力ではなかったとも考えた。まことの近《ちか》つ代《よ》を開くために生まれて来たような本居宣長の生涯なぞがこんな時に顧みられようはずもなかった。橋本|雅邦《がほう》は海軍省の製図に通うといい、狩野芳崖《かのうほうがい》も荒物屋の店に隠れた。
 おそらくもう一度来て見る機会はあるまいと思いながら、やがて悄然《しょう
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