その骨格のたくましいところは先代吉左衛門に似て、膝《ひざ》の上に置いた手なぞの大きいことは、対坐《たいざ》するたびに勝重の心を打つ。その日、半蔵はあいにく妻が本家の方へ手伝いに行っている留守の時であると言って見せ、手ずから茶などをいれて旧《ふる》い弟子をもてなそうとした。そこへ勝重が落合からさげて来たものを取り出すと、半蔵は目を円《まる》くして、
「ホウ、勝重さんは酒を下さるか。」
まるで子供のようなよろこび方だ。そう言う半蔵の周囲には、継母はじめ、宗太夫妻から親戚《しんせき》一同まで、隠居は隠居らしく飲みたい酒もつつしめと言うものばかり。わざわざそれをさげて来て、日ごろの愁《うれ》いを忘れよとでも言うような人は、昔を忘れない弟子のほかになかった。
「勝重さん、君の前ですが、この節|吾家《うち》のものは皆で寄ってたかって、わたしに年を取らせるくふうばかりしていますよ。」
「そりゃ、お家の方がお師匠さまのためを思うからでしょうに。」
「しかし、勝重さん、こうしてわたしのように、日がな一日山にむかって黙っていますとね、半生の間のことがだんだん姿を見せて来ましてね、そう静かにばかりしてはい
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