ょく》をとぼしながら囲炉裏ばたの勝手の方へ忍んだ。
二合ばかりの酒、冷たくなった焼き味噌《みそ》、そんなものが勝手口の戸棚《とだな》に残ったのを半蔵は探《さが》し出して、それを店座敷に持ち帰った。彼が火鉢《ひばち》だ炭取りだ鉄瓶《てつびん》だと妻の枕もとを歩き回るたびに、深夜の壁に映るひとりぼっちの影法師は一緒になって動いた。
物を学ばせに子供を上京させたことから、半蔵はいろいろな心持ちを引き出されていた。お民が何も知らずにいる間に、彼は火鉢の火をおこしたり、鉄瓶をかけたりなぞしながら、そのことを考えた。つまり、それは彼自身に物を学びたいと思う心が熱いからであった。あの『勧学篇《かんがくへん》』などを子供に書いてくれて、和助が七つ八つのころから諳誦《あんしょう》させたのも、その半蔵だ。学芸の思慕は彼の天性に近かった。それはまた親譲りと言ってもよかった。彼が平田入門を志した青年の日、父吉左衛門にその望みを打ち明けたところ、父は馬籠の本陣を継ぐべき彼が寝食も忘れるばかりに平田派の学問に心を傾けて行くのを案じながらも、
「お前の学問好きは、そこまで来たか。」
と言って、結局彼の願い
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