さん(お粂《くめ》)の肥《ふと》ったには驚きましたよ。あの姉さんも、いい細君になりましたぜ。」
 宗太が思い出したように、そんな話を家のものにして聞かせると、
「ねえ、お母《っか》さん、色の白い人が肥ったのも、わるかありませんね。」
 飯田《いいだ》育ちのお槇《まき》もお民のそばにいて言葉を添える。
 その晩、半蔵は子供らが上京の模様にやや心を安んじて、お民と共に例の店座敷でおそくまで話した。過ぐる一年ばかりは和助もその部屋《へや》には寝ないで、年老いた祖母と共に提灯《ちょうちん》つけて裏二階の方へ泊まりに行ったことを彼は思い出し、とにもかくにもその末の子までが都会へ遊学する時を迎えたことを思い出し、先代吉左衛門も彼の年になってはよく枕《まくら》もとへ古風な手さげのついた煙草盆《たばこぼん》を引きよせたことなぞを思い出して、お民と二人の寝物語にまで東京の方のうわさで持ち切った。
「お民、お粂が結婚してから、もう何年になろう。植松のお婆さんでおれは思い出した。あの人の連れ合い(植松|菖助《しょうすけ》、木曾福島旧関所番)は、お前、維新間ぎわのごたごたの中でさ、他《よそ》の家中衆から名古屋
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