強兵とだ。しかしよく見れば、地方の人心はまだまだ決して楽しんではいない。日ごろ半蔵らの慕い奉る帝《みかど》が新時代の前途を祝福して万民と共に出発したもうたころのことが、また彼の胸に浮かぶ。あの時に帝の誓われた五つのお言葉と、官武一途はもとより庶民に至るまでおのおのその志を遂げよと宣せられたその庶民との間には、いつのまにか天《あめ》の磐戸《いわと》にたとえたいものができた。その磐戸は目にも見えず、説き明かすこともできないが、しかし深い草叢《くさむら》の中にあるものはそれを感ずることはできた。それあるがために日の光もあらわれず、大地もほほえまず、君と民とも交わることができなかった。どうして彼がそんな想像を胸に描いて見るかというに、あの東山道軍が江戸をさして街道を進んで来た維新のはじめの際、どんな社会の変革でも人民の支持なしに成《な》し就《と》げられたためしのないように、新政府としては何よりもまず人民の厚い信頼に待たねばならないとして、東山道総督の執事がそのために幾度も布告を発し、堅く民意の尊重を約束したころは、そんな磐戸はまだ存在しなかったからであった。たまたまここに磐戸を開こうとしてあら
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