しげりあふめり
この頃《ごろ》は夏野の草のうらぶれて風の音だにきかずもあるかな
たまさかの言の葉草もつまなくにたまるは袖《そで》の露にぞありける
しげりあふ夏山のまにゆく水のかくれてのみやこひわたりなむ
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「あなた、そんなにつめていいんですか。」
階下《した》から箱梯子《はこばしご》を登って、二間つづきの二階に寝ている伊之助を見に来たのは、妻のお富《とみ》だ。
「おれか、」と伊之助は答えた。「さっきからおれは半蔵さんの歌に凝ってしまった。こういうもので見ると、実にやさしい人がよく出ているね。」
「あの中津川のお友だちと、半蔵さんとでは、どっちが歌はうまいんでしょう。」
「お前たちはすぐそういうことを言いたがるから困る。すぐに、どっちがうまいかなんて。」
「こりゃ、うっかり口もきけない。」
「だって、まるで行き方の違ったものだよ。別の物だよ。」
「そういうものですかねえ。」
「おれも好きな道だから言うが、半蔵さんの歌は出来不出来がある。そのかわり、どれを見ても真情は打ち出してあるナ。言葉なぞは飾ろうとしない。あの拙《つたな》いところが作者のよいところだね。こう一
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