に起こって来て、自分らの持つ古い金貨が流れ出して行き、そのかわりにはいって来る新しい文明開化が案外な洋銀のようなものであるとしたら、それこそ大変な話だと思われて来た。
 月の中旬が来るころには、いよいよ半蔵が水無神社宮司の拝命もおもてむきの沙汰《さた》となった。もはや彼の東京にとどまるのも数日を余すのみとなった。


 朝が来た。例のように半蔵が薄暗い空気の中で水垢離《みずごり》を執り、からだを浄《きよ》め終わるころは、まだ多吉方の下女も起き出さないで、井戸ばたに近い勝手口の戸障子も閉《し》まっていた。そこいらには、町中ながらに鶏の鳴き声が朝霧の中に聞こえていた。
 その日、半蔵は帝《みかど》の行幸のあることを聞き、神田橋《かんだばし》まで行けばその御道筋に出られることを知り、せめて都を去る前に御通輦《ごつうれん》を拝して行こうとしていた。彼はそのことを多吉夫婦に告げ、朝の食事をすますとすぐ羽織袴《はおりはかま》に改めて、茅場町《かやばちょう》の店へ勤めに通う亭主より一歩《ひとあし》早く宿を出た。神田川について、朝じめりのした道路の土を踏んで行くと、次第に町々の空も晴れて、なんとなく改
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