なき無格の小寺も、本山への献金によつて寺格を進めらるることのあれば、昨日にび色の法衣着たる身の今日は緋色《ひいろ》を飾るも、また黄金の力たり。堂塔の新築改造には、勧進《かんじん》、奉化《ほうげ》、奉加《ほうが》とて、浄財の寄進を俗界に求むれども、実は強請に異ならず。その堂内に通夜する輩《やから》も風俗壊乱の媒《なかだち》たり。」とはすでに元禄の昔からである。全国寺院の過多なること、寺院の富用無益のこと、僧侶の驕奢《きょうしゃ》淫逸《いんいつ》乱行|懶惰《らんだ》なること、罪人の多く出ること、田地境界訴訟の多きこと等は、第三者の声を待つまでもなく、仏徒自身ですら心あるものはそれを認めるほどの過去の世相であったのだ。
 大きな破壊の動いた跡はそこにも驚かれるほどのものがある。利にさとい寺方が宮公卿《みやくげ》の名目で民間に金を貸し付け、百姓どもから利息を取り立てる行為なぞはまッ先に鎗玉《やりだま》にあげられた。仁和寺《にんなじ》、大覚寺をはじめ、諸|門跡《もんぜき》、比丘尼御所《びくにごしょ》、院家、院室等の名称は廃され、諸家の執奏、御撫物《おさすりもの》、祈祷巻数《きとうかんじゅ》ならび
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