の中に立ちながら、実に大胆に恋というものを肯定した本居宣長その人の生涯に隠れている婦人にまでその想像を持って行って見た。
しかし、半蔵が教部省を去ろうとしたのは、こんな同僚とのいきさつによるばかりではない。なんと言っても、以前の神祇局は師平田鉄胤をはじめ、樹下茂国《じゅげしげくに》、六人部雅楽《むとべうた》、福羽美静《ふくばよしきよ》らの平田派の諸先輩が御一新の文教あるいは神社行政の上に重要な役割をつとめた中心の舞台である。師の周囲には平田|延胤《のぶたね》、師岡正胤《もろおかまさたね》、権田直助《ごんだなおすけ》、丸山|作楽《さらく》、矢野|玄道《げんどう》、それから半蔵にはことに親しみの深い暮田正香《くれたまさか》らの人たちが集まって、直接に間接に復古のために働いた。半蔵の学友、蜂谷香蔵《はちやこうぞう》、今こそあの同門の道づれも郷里中津川の旧廬《きゅうろ》に帰臥《きが》しているが、これも神祇局時代には権少史《ごんしょうし》として師の仕事を助けたものである。田中|不二麿《ふじまろ》の世話で、半蔵がこんな縁故の深いところに来て見たころは、追い追いと役所も改まり、人もかわりしてい
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