で、近ごろの婦人が夜の席に着る衣裳の色の変わって来たことなぞを半蔵に言って見せ、世の中の流行が変わる前に、すでに燈火が変わって来ていると言って見せる。
多吉夫婦は久しぶりで上京した半蔵をつかまえて、いろいろと東京の話をして聞かせるが、寄席《よせ》の芸人が口に上る都々逸《どどいつ》の類《たぐい》まで、英語まじりのものが流行して来たと言って半蔵を笑わせた。お隅は、一鵬斎芳藤《いちほうさいよしふじ》画《えが》くとした浮世絵なぞをそこへ取り出して来る。舶来と和物との道具くらべがそれぞれの人物になぞらえて、時代の相《すがた》を描き出してある。その時になって見ると、遠い昔に漢土の文物を採り入れようとした初めのころのこの国の社会もこんなであったろうかと疑わるるばかり。海を渡って来るものは皆文明開化と言われて、散切《ざんぎ》り頭をたたいて見ただけでも開化した音がすると唄《うた》われるほどの世の中に変わって来た。夏は素裸、褌《ふんどし》一つ、冬はどてら一枚で、客があると、どんな寒中でも丸裸になって、ホイ籠《かご》ホイ籠とかけ出す駕籠屋《かごや》なぞはもはや顔色がない。年じゅう素股《すまた》の魚屋から、
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