見[#一]也。蓋心之霊在[#レ]思。其霊最覚者、思弥遠矣。而愚也非[#レ]所[#レ]敢也。然人心不[#レ]能[#レ]無[#レ]思。而吾性所[#レ]思最多常鬱[#三]陶于[#二]心胸[#一]也。陳[#レ]之、列[#レ]之、以熟[#二]思其所思[#一]、其有[#レ]所[#レ]得乎。吾素微躯、惟守[#二]其業[#一]、仰以事[#レ]親、俯以養[#二]妻子[#一]、則能事畢焉。何其媚[#レ]世求[#レ]容[#レ]之為也。雖[#レ]然、如[#レ]此而生、如[#レ]此而死、焉在[#三]其為[#二]万物之霊[#一]也。竊観[#二]昔人之所[#一レ]為。有[#二]以[#レ]文鳴者[#一]。有[#二]以[#レ]武知者[#一]。有[#二]直諫而死者[#一]。有[#二]忠亮而終始一如者[#一]。有[#二]信義以自守者[#一]。有[#二]私淑而自修者[#一]。有[#二]見[#レ]危致[#レ]命者[#一]。有[#二]良図建[#レ]功者[#一]。有[#二]英断果決見[#レ]過則能改者[#一]。有[#下]苟喪[#二]其人[#一]則失[#二]千載之伝[#一]者[#上]。有[#下]常思[#二]四方之遠[#一]不[#レ]忘[#二]民之細故[#一]者[#上]。有[#下]善察[#二]百世之後[#一]憂[#二]国家之憂[#一]者[#上]。有[#下]禁[#レ]暴戡[#レ]乱能畏[#二]服四方[#一]者[#上]。有[#下]歴[#二]記百世之事[#一]以伝[#レ]于[#二]将来[#一]者[#上]。凡事如[#レ]此。則非[#三]一身之所[#二]能為[#一]也。然則従[#二]吾所[#レ]好者[#一]乎。
[#ここで字下げ終わり]
読みかけて、「しからばすなわち、わが好むところのものに従わんか」の最後のくだりになると、五十余年の数奇な生涯《しょうがい》が半蔵の胸に浮かんで来た。見るもの聞くもの涙の種でないものはなかったようなところすら通り越して、今は涙も流れなかった。
その晩、半蔵は弟子を相手にして、しきりに物を書いた。静の屋ではまだ行燈《あんどん》しか用いなかったが、その燈火《あかり》では暗かったから、彼は三郎らに手燭《てしょく》を持たせ、蝋燭《ろうそく》の灯《ひ》に映る紙の上に和歌なぞを大きく、しかもいろいろに書いて遊んだ。あるものは仮名《かな》文字、あるものは真名《まな》文字というふうに。それを三郎にも益
前へ
次へ
全245ページ中208ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング