際の退歩するところがある。我《われ》は開くことを希望するし、彼は鎖《とざ》すことを希望する。そんなふうに競い合って行って、彼も迫り我も迫って互いに一歩も譲らないとなると、勢い銃剣の力をかりないわけにいかなくなる。互いの事情を斟酌《しんしゃく》する必要がそこから起こって来る。それには「真知」をもってせねばならない。そもそも外国人は何のために日本へ来るのであるか。ほかでもない、政府と親しくし、日本人とも親しく交わりたいがためである。交易以来、そのために貧しくなった国はまだない。万一、一方の損になるばかりなら、その交易は必ずすたれる。双方に利があれば必ず行なわれもするし、必ず富みもする。交易をすれは物価が高くなる。物価が高くなれば輸出の減るということも起こって来る。輸入品が多くなれば交易のできなくなることもある。だから節制しないうちに自然と節制があるようなもので、交易は常に氾濫《はんらん》に至らない。国内の人民も物を欠くに至らない。約《つづ》めて言えば、人類の交際は明白な直道で、いじけたものでもなく、曲がりくねったものでもないのに、何ゆえに日本はこんなに外国を嫉視《しっし》するのであるか。外
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