曾にも少なくなると思わせるのもこの隠居だ。
「いや、変わるはずですね。」とまた得右衛門が言った。「御本陣の主人が先に立って惜しげもなく髪を短くする世の中ですからね。戸長さんがあのとおりの散髪なのに、副戸長が髷《まげ》ではうつりが悪い。実蔵のやつもそんなことを言い出しましてね、あれもこないだ切りました。その前の晩に、髪結いを呼ぶやら、髪を結わせるやら――大騒ぎ。これが髷のお別れだ、そんなことを言って、それから切りましたよ。そう言えば、半蔵さんはまだ総髪《そうがみ》ですかい。」
「ええ、うちじゃ総髪にして、紫の紐《ひも》でうしろの方を結んでいますよ。」とお民が答える。
「半蔵さんで思い出した。そう、そう、あの暦の方の建白は朝廷の御採用にならなかったそうですね。さぞ、半蔵さんも残念がっておいででしょう。わたしは寿平次さんからその話を聞きましたが。」
この半蔵の改暦に関する建白とは、かなり彼の心をこめたもので、新政府が太陽暦を採用する際に、暦のような国民の生活に関係の深いものまで必ずしもそう西洋流儀に移る必要はなく、この国にはこの国の風土に適した暦もあっていいとの趣意から、当局者の参考にと提
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