。」
「そう言えば、吉左衛門さん、あなたにお目にかかると、この節は食べる物の話ばかり出るじゃありませんか。」
この人たちのにぎやかな笑い声を聞きながら、半蔵は寿平次の隣にいて膳《ぜん》に就《つ》いた。酒は隣家の伏見屋から取り寄せたもの。山家風な手打ち蕎麦《そば》の薬味には、葱《ねぎ》、唐《とう》がらし。皿《さら》の上に小鳥。それに蝋茸《ろうじ》のおろしあえ。漬《つ》け物。赤大根。おまんが自慢の梅酢漬《うめずづ》けの芋茎《ずいき》。
「半蔵さん、正己が養子縁組のことはどうしたものでしょう。」
と寿平次がたずねた。一晩馬籠に泊まった翌朝のことである。
「そいつはあとでもいいじゃありませんか。」と半蔵は答えた。「まあ、なんということなしに、連れて行ってごらんなさるさ。」
そこへおまんとお民も来て一緒になった。おまんは寿平次を見て、
「正己はあれで、もうなんでも食べますよ。酢茎《すぐき》のようなものまで食べたがって困るくらいですよ。妻籠のおばあさんはよく御承知だろうが、あんまり着せ過ぎてもいけない。なんでも子供は寒く饑《ひも》じく育てるものだって、昔からよくそう言いますよ。」
「兄さ
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