人の一人《ひとり》とありますね。」
「どうです、平田先生の本は木板が鮮明で、読みいいでしょう。」
「たしかに特色が出ていますね。」
「この第一|帙《ちつ》の方は伊那《いな》の門人の出資で、今度できたのは甲州の門人の出資です。いずれ、わたしも阿爺《おやじ》と相談して、この上木の費用を助けるつもりです。」
「半蔵さん、今じゃ平田先生の著述というものはひろく読まれるそうじゃありませんか。こういう君たちの仕事はいい。ただ、わたしの心配することは、半蔵さんがあまり人を信じ過ぎるからです。君はなんでも信じ過ぎる。」
「寿平次さんの言うことはよくわかりますがね、信じてかかるというのが平田門人のよいところじゃありませんか。」
「信を第一とす、ですか。」
「その精神をヌキにしたら、本居《もとおり》や平田の古学というものはわかりませんよ。」
「そういうこともありましょうが、なんというか、こう、君は信じ過ぎるような気がする――師匠でも、友人でも。」
「……」
「そいつは、気をつけないといけませんぜ。」
「……」
「そう言えば、半蔵さん、京都の方へ行ってる景蔵さんや香蔵さんもどうしていましょう。よくあんなに中
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