にはまだかれこれとのつぶやきが絶えない。その時の慶喜の言葉に、各《おのおの》においても本来自分が京都にあるのは何のためかと思って見るがいい。こう穏やかでない時勢であるから輦下《れんか》の騒擾《そうじょう》をしずめ叡慮《えいりょ》を安んじ奉らんがためであることはいずれも承知するところであろう。しかるに非徳の自分が京都にあるためその禍根を醸《かも》したとは思わずに、かえって干戈《かんか》を動かし、自分を敵視するものを討《う》つとあっては、ただただそれは宸衷《しんちゅう》を驚かし奉り万民を困苦せしむる罪を重ぬるのみであって、一つとして義理に当たるものはなく、忠貞の素志もそのためにむなしくなろう。この上は、ただ自身に反省して、己《おのれ》を責め、私を去り、従前の非政を改め、至忠至公の誠心をもって天下と共に朝廷を輔翼し奉るのほかはない。その事は神祖の神慮にも適《かな》うであろう。神祖は天下の安からんがために政権を執ったもので、天下の政権を私せられたのではない。自分もまた、天下の安からんがために徳川氏の政権を朝廷に還《かえ》し奉るものであるから、取捨は異なるとも、朝廷に報ゆるの意はすなわち一つであ
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