らない、諸藩の内部は分裂と党争とを事としている、上御一人よりほかに万民を統一するものはなくなった、とある。おそらく闘争は神代よりあった、上御一人をして万《よろ》ずの族《やから》を統《す》べさせたもうことは神の大御心の測りがたいところではあるまいか、ともある。

       五

 土蔵付き売屋。
 これは、傾きかけた徳川幕府の大身代をどうかしてささえられるだけささえようとしているような、その大番頭の一人《ひとり》とも言うべき小栗上野《おぐりこうずけ》の口から出た言葉である。土蔵付き売屋とは何か。それは幕府が外国政府より購《あがな》い入れた軍艦や汽船の修繕に苦しみ、小栗上野とその知友|喜多村瑞見《きたむらずいけん》との協力の下に、元治元年あたりからその計画があって、いよいよ慶応元年のはじめより経営の端緒についた横須賀《よこすか》の方の新しい造船所をさす。どうして造船所が売屋であるのか。どうしてまた、それがいよいよ出来《しゅったい》の上は旗じるしとして熨斗《のし》を染め出しても、なお土蔵付きの栄誉を残すであろうと言われるのか。これは小栗上野が一時の諧謔《かいぎゃく》でもない。その内心には
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