へ取り出した。
「さあ、これだ。」
と言って、祭典のおりに供えた記念の品を半蔵にも分けた。
「や、これはよいものをくださる。吾家《うち》の阿爺《おやじ》もさぞ喜びましょう。」
半蔵は手を鳴らしてお民を呼んだ。そこへ来て客をもてなすお民を見ると、正香はすこし改まった顔つきで、
「奥さんには御挨拶《ごあいさつ》をしたぎりで、まだお礼も申しませんでした。いつぞやは、お宅の土蔵の中へ隠していただいた暮田です。」
聞いているものは皆笑い出した。
平田家から条山神社へ寄進のあったという篤胤遺愛の陽石の話になると、一座の中には笑い声が絶えない。陽石――男性の象徴――あれを自分の御霊代《みたましろ》として残し伝えたいとは、先師の生前に考えて置いたことであると言わるるが、平田家ではみだりに他へもらすべき事でないとして、ごく秘密にしていた。いつのまにかそれが世間へ伝聞して、好事《こうず》の者はわけもなしにおもしろがり、高い風評の種となっているところへ、今度条山神社を建てるについてはぜひにとの山吹社中の懇望だったのである。平田家では非常に迷惑がったともいう。天朝かまたは堂上方の内より御所望のあるため
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