謹慎するがいい、あとの事は自分がこの地においてなんとか取り繕おう、周旋もしようと言い聞かせた。
この小笠原老中の言葉にやや安心して、駿河はそこをすべり出た。監察|向山《むこうやま》栄五郎のことが彼の胸に浮かんだ。せめて栄五郎だけにはあい、今度の事から後日の処置を話して行きたいと思って、そばにいる人に尋ねると、栄五郎は過ぐる日すでに罪を得て旅籠屋《はたごや》に閉居する身であるとの返事であった。
夕闇《ゆうやみ》が迫って来た。城内の廊下も薄暗い。その時、蓬髪《ほうはつ》で急ぎ足に向こうから廊下を踏んで来るものがある。その人こそ軍艦奉行、兼外務取り扱いとして、江戸から駆けつけて来た彼の友人だ。監察の喜多村瑞見だ。駿河は友人を物の陰に招いたが、こまかい話なぞする時がない。ただ、時事はまたいかんともしようがない、友人が自分に代わって努力してくれるように、とのわずかなことだけが言えた。
「あとの事はよろしく頼む。」
その言葉を瑞見に残して置いて、そこそこに駿河は二条城を出た。彼は大坂からその城に移って来ている知人らに別れを告げる暇《いとま》をすら持たなかった。
五
京都か
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