京と二人で兵庫の旅籠屋《はたごや》にいて、不安な時を送りつづけた。翌朝も二人で首を長くして各国船の出帆を待っていると、夜が明けないうちから諸藩の侍が続々と旅籠屋へ押しかけて来た。各国船がゆえなく退帆するのはどういう理由であるかの、前日松平伯耆が談判の模様はいかがであったの、ほとんどこの交渉を信じられないかのような詰問だ。各国船の退帆は約束の時よりおくれた。ようやく九日の朝になって、退去を告げる汽笛の音が各国の船から起こった。その音は兵庫開港の遠くないことを期するかのように、高く港の空に響き渡った。
山口駿河が赤松左京と共に各国船退帆の報告をもって、兵庫から京都の二条城にたどり着いたころはもはや黄昏時《たそがれどき》に近い。例の御用部屋に行って老中に面謁し一切の顛末《てんまつ》を述べようとすると、そこにはまた思いがけないことがこの駿河を待っていた。
「駿河、そちは今少しで切腹を仰せ出されるところであったぞ。」
上座にある慶喜が微笑を見せながらの挨拶《あいさつ》だ。
駿河が驚いてその理由を尋ねようとすると、老中小笠原壱岐は別室へ彼を招き、その前日あたりの京都での風聞によると彼が兵
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