われですさ。」と景蔵は言う。
「そういう景蔵さんの意見は、実際の京都生活から来てる。どうもわたしはそう思う。」
「そんなら見たまえ、長州藩あたりじゃ伊藤俊助《いとうしゅんすけ》だの井上聞多《いのうえもんた》だのという人たちをイギリスへ送っていますぜ。それが君、去年あたりのことですぜ。あの人たちの密航は、あれはなかなか意味が深いといううわさです。攘夷派の筆頭として知られた長州藩の人たちがそれですもの。」
「世の中も変わって来ましたな。」
「まあ、わたしに言わせると、尊攘ということを今だにまっ向《こう》から振りかざしているのは、水戸ばかりじゃないでしょうか。そこがあの人たちの実に正直なところでもありますがね。」
 木曾山の栗《くり》の季節はすでに過ぎ去り、青い香のする焼き米にもおそい。それまで半蔵は炬燵《こたつ》の上に手を置いて二人の友だちの話を聞いていたが、雪の来るまで枯れ枝の上に残ったような信濃柿《しなのがき》の小粒で霜に熟したのなぞをそこへ取り出して来て、景蔵や香蔵と一緒に熱い茶をすすりながら、店座敷の行燈《あんどん》のかげに長い冬の夜を送ろうとしていた。彼にして見ると、ヨーロッパを
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