士の一隊は高い山上の位置から諏訪松本両勢の陣地を望み見るところまで達した。
 こんなに浪士側が迫って行く間に、一方諏訪勢はその時までも幕府の討伐隊を頼みにした。来る、来るという田沼勢が和田峠に近づく模様もない。もはや諏訪勢は松本勢と力を合わせ、敵として進んで来る浪士らを迎え撃つのほかはない。間もなく、峠の峰から一面に道を押し降《くだ》った浪士側は干草山《ほしくさやま》の位置まで迫った。そこは谷を隔てて諏訪勢の陣地と相距《あいへだ》たること四、五町ばかりだ。両軍の衝突はまず浪士側から切った火蓋《ひぶた》で開始された。山の上にも、谷口にも、砲声はわくように起こった。


 諏訪勢もよく防いだ。次第に浪士側は山の地勢を降り、砥沢口《とざわぐち》から樋橋《といはし》の方へ諏訪勢を圧迫し、鯨波《とき》の声を揚げて進んだが、胸壁に拠《よ》る諏訪勢が砲火のために撃退せられた。諏訪松本両藩の兵は五段の備えを立て、右翼は砲隊を先にし鎗《やり》隊をあとにした尋常の備えであったが、左翼は鎗隊を先にして、浪士側が突撃を試みるたびに吶喊《とっかん》し逆襲して来た。こんなふうにして追い返さるること三度。浪士側も進
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