これは、国をあげての建て直しでなくちゃなりませんね。」
「いずれ京都では鉄胤《かねたね》先生もお待ちかねでしょう。」
「まあ、今度はあの先生にしかられに行くようなものです。しかし、青山君、見ていてくれたまえよ。長い放浪で、わたしもいくらか修業ができましたよ。」


 にわかに同門の人たちも動いて来た。正香の話にもあるように、師岡正胤をはじめ、八、九人の三条河原事件に連坐《れんざ》した平田門人らは今度の大赦に逢《あ》って、また京都にある師鉄胤の周囲に集まろうとしている。そういう正香自身も沢家に身を寄せることを志して上京の途中にあり、同じ先輩格で白河家《しらかわけ》の地方用人なる倉沢義髄《くらさわよしゆき》、それに原|信好《のぶよし》なぞは上京の機会をうかがっている。岩倉家の周旋老媼《しゅうせんばば》とまで言われて多くの志士学者などの間に重きをなしている松尾|多勢子《たせこ》のような活動的な婦人が帰郷後の月日をむなしく送っているはずもない。多勢子とは親戚《しんせき》の間柄にある景蔵ですら再度の上京を思い立って、近く中津川の家を出ようとしている。
 その日、半蔵は正香や景蔵らを馬籠の宿はずれまで見送って、同じ道を自分の家へ引き返した。三人の客がわざわざ山吹村からさげて来てくれた祭典記念の神酒《みき》と菓子の折《おり》とがそのあとに残った。彼はそれを家の神棚《かみだな》に供えて置いて、そばへ来る妻に言った。
「お民、このお神酒《みき》は家じゅうでいただこうぜ。お菓子もみんなに分けようぜ。」
「きっと、お父《とっ》さんが喜びますよ。」
「おれもこれをいただいて、今夜はよく眠りたい。いろいろなことを考えるとおれは眠られなくなって来るよ。このおれの耳には、どれほどの騒がしい音が聞こえて来るかしれない。」
「あなたには眠られないということが、よくあるんですね。」
「ごらんな、景蔵さんもまた近いうちに京都へ出かけるそうだ。あの人もぐずぐずしちゃいられなくなったと見える。」
「あなた――あなたは家のものと一緒にいてくださいよ。お父さんのそばにいてくださいよ。あのお父さんも、いつどんなことがあるかしれませんよ。」
「そりゃお前に言われるまでもないサ。まあ、条山神社のお神酒《みき》でもいただいて、今夜はよく眠ることだ。こういう時世になって来ると、地方なぞはてんで顧みられない。おれのような縁
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